令和8年度 一級建築士学科試験の講評


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令和8年一級建築士学科試験の問題は、近年の社会状況、技術の進歩、法令の改正等を踏まえた幅広い分野から様々な問題が出題されましたが、新規の問題の出題は例年より、やや減少したことなどにより、難易度は全体的にやや低いものとなりました。科目別の難易度としては、学科Ⅰ(計画)、学科Ⅱ(環境・設備)、学科Ⅲ(法規)は例年並みで、学科Ⅳ(構造)、学科Ⅴ(施工)の難易度は、やや例年よりも低かったといえます。

学科I 計画

令和8年度計画の出題分野の構成は、ほぼ例年通りで、建築士の職責が1問、建築計画が10問、都市計画が3問、建築史・建築作品が3問、設計・監理業務が1問、プロジェクトマネジメントが1問、建築積算が1問と非常に幅広い分野から出題されました。

もともと学科Ⅰ(計画)の計画の意味は設計に係わるような狭義ではなく、非常に広い意味で捉えられているため、全ての科目の分野に渡るほどの広い分野から出題されるのが特徴です。

先ず、建築士の職責について、建築士法の問題が第1問目に出題されることはよくあることで、広義の計画についての様々な問題の前の第1問目に建築士の職責(業務上の心構え)についての問題が先ず出題されるのは理にかなっているように思われます。

本年度も、少子高齢化、気候変動・環境配慮、建築の木造化、都市再生・立地再生化計画、共生社会、建築の保存再生、防災・避難施設等、様々な視点からの幅広い問題が出題され、新規な事項についての出題も見られましたが、概ね難易度としては例年並みであったといえます。

学科Ⅱ 環境・設備

環境・設備の出題構成は例年通りの環境工学が10問、建築設備が10問でした。

本年度の出題で特に注目されるのは、「精密機器工場において常に温度と湿度を一定保持する方式」や「事務所ビルの事務室での空気調和・換気設備の概略図」についての初出題の問題で、空調理論についてのしっかりした理解を要する問題でした。

また、環境・設備の融合問題として、近年の省エネルギーに係わる「ESG不動産投資」についての問題も初出題で注目されましたが、その他の問題では、過去の既出題の範囲からの問題も多く、概ね、全体的な難易度は例年並みであったといえます。

学科Ⅲ 法規

法規の出題分野の構成は例年通りで建築基準法が20問、その他関係法令が10問でした。

建築基準法では、本年度は特に従来はあまり出題されることのなかった告示に関する詳細な事項から出題されたことが注目されます。
また、毎年出題される計算問題は「容積率」「高さ制限」についての問題が出題されましたが、例年と同様の内容、同程度の問題で、過去問をしっかり学習することにより、確実に解くことのできる問題でした。
なお、建築基準法に関する問題としては、「外壁以外の特定主要構造部」についての問題が新規な視点からの問題として注目されました。

更に、その他の関係法令に関する問題としては、令和7年4月1日改正施行分の「改正建築物省エネ法」から省エネ基準適合義務や省エネ適合性判定の適用除外についての問題が出題されたのが注目され、またバリアフリー法から車椅子使用者用客席の設置数についての問題等が新規の問題として出題されたのが注目されます。

上記のように、一部に新規の視点からの注目すべき問題や難易度の高い問題もあったものの、既出題範囲内からの問題も多く、概ね全体的な難易度は例年並みであったといえます。

学科Ⅳ 構造

構造の出題分野の構成としては、ほぼ例年通りで、構造力学が7問、各種構造が20問、建築材料が3問でした。

構造力学では「梁の変形」についての問題で、梁の剛性が梁の左右で異なる問題が新規の問題として出題され、また各種構造では、「木造軸組工法による地上2階建ての建築物」についての問題で、令和7年4月1日改正施行分の「準耐力壁」「木造K形筋かい」についての問題が新規の問題として出題されました。

また、各種構造に関する問題では、「免震構造」について、上部構造の地震時応答せん断力とダンパーの減衰力との関係を問う、理論についての着実な理解力を要する問題が出題されたのが注目されます。

以上のように、構造では一部に新規の問題や難易度の高い問題も出題されたものの、過去の出題範囲からの問題も多く出題されており、過去の出題範囲についての着実な学習により、得点できる問題が多かったため、構造の難易度は例年よりもやや低く、構造の基礎的な問題の取りこぼしが致命的になる場合もあるとも考えられます。

学科V 施工

施工の出題分野の構成は、ほぼ例年通りで、施工計画・工事管理が4問、各種工事が20問、請負契約が1問でした。

本年度の問題では、施工計画の「遠隔臨場」は、近年の情報通信技術を活用した現場管理システムに関する問題で注目されます。また、地盤調査・仮設計画についての「動的コーン貫入試験」や「固定ピストン式シンフォールサンプラー」に関する問題や、更に鉄骨工事についての「圧接部の外観試験及び超音波深傷試験を行う技能資格者」に関する問題や「耐震改修工事」についての「あと施工アンカーのビット径」に関する問題などが新規の視点の問題として出題され、注目されました。

施工は、元々、各工程ごとの施工技術についての各種専門用語等、出題範囲が非常に広いため、確実な理解による確実な記憶が重要な科目で、例年、新規の出題も多い科目ですが、本年度の問題は既出題範囲からの出題が比較的多かったことなどにより、本年度の難易度は例年に比して、やや低かったものと考えられます。

上記のように、本年度の学科試験の問題は例年に比し、過去の既出題範囲内からの出題が比較的多かったため、全体的な難易度は例年に比し、やや低かったといえますが、それだけに過去の既出題範囲内からの問題については、確実に得点できることが重要で、取りこぼしがあると致命的なことにもなると考えられます
また、過去の出題範囲からの問題、すなわち過去問に類する問題であっても、単に過去問の焼き直しのような問題ではなく、新たな視点からより深い理解力、応用力を要する問題として工夫されている問題も種々出題されるようになってきているため、単なる表面的な記憶でなく、より深い理解を得る学習が求められます

過去の既出題範囲内についての着実な学習により、先ず合格するための必要条件としての各科目ごとの50%以上の得点は可能とも考えられますが、正答肢の30%程度が初出題となる近年の傾向から、合格のための充分条件としての全科目の総合点で75%程度の得点のためには、過去の出題範囲内の過去問中心の学習のみでは不充分で、より広範囲で、より深い学習が必要とされます。

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