この度、試験実施機関より、令和7年度二級建築士試験の結果が発表されましたが、発表された事項の中で最も注目される点として、試験の採点結果の4段階の評価のランクの中で最も低いランクⅣの割合が、従来は概ね10%程度であったのが、令和7年度の試験では25.1%と急増していることが挙げられます。
これは一体何を意味するのでしょうか。
ランクⅣは「設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの」となっていますが、この中で、要求図書に対する重大な欠陥として、例えば、木構造上の重大な欠陥、階段の位置の不適合、図面の一部の欠落等々の問題は、課題の内容自体とは直接関係のない欠陥として一定の割合で起こり得るものと考えられるため、これらに関連することとして、大きくランクⅣの割合が変わるとは考えにくいといえます。
以上からランクⅣの割合が急増した原因としては「設計条件に対する重大な不適合に該当するもの」が主要因であると考えることができます。
すなわち、令和7年度の試験では、従来の試験の内容に比して、設計条件の難度が高くなり、それだけ基礎的な建築計画力の評価の比重が高くなった結果と考えることができます。
なお、以上の設計条件の難度が高くなった点は、ランクⅡ、ランクⅢの評価においても様々な点で影響しているものと考えることができます。
それでは具体的にどのような点が設計条件の難度が増している点であるか、以下に記すこととします。
- 敷地の面積(233㎡)に比して、要求された建物の延べ面積は「200㎡以上で250㎡以下」で、敷地面積に対して建物の規模は比較的大きく、建物の配置上の余裕は少ないため、それだけ建築計画の難度はかなり高くなっています。
- 敷地に接する道路として敷地の西側と南側に同一の幅員15mの道路が接しており、そのどちらから建物へのメインアプローチをとるかを先ず受験者(設計者)が考えなければならない重要ポイントとなっており、これを誤ると後の計画に重要な支障をきたすこととなります。
一般的に住宅又は住宅関連施設では、南側は居間、庭等のための落ち着いた空間として確保するためにも、アプローチをとることはできるだけ避けたい訳ですが、この課題では上記のように建物の面積に対して敷地の面積の余裕が少ないため、なおさら南側の道路からのアプローチを避け、西側の道路からアプローチをとることが適切な考え方となります。 - 建物の全体配置上の考え方として、課題条件では、2階建の建物で1、2階ともにほぼ同面積の個室を設けることとなっていますが、特に共有空間の比重の大きい1階にほぼ2階の個室と同一面積の個室を設けることにより、1階の配置計画は相当程度難しいものとなっています。
また、通常は1,2階の個室とも南向きとし、更にL、D、K、テラスも南向きに配置することが最も好ましい訳ですが、この課題条件では建物の面積に対する敷地面積の余裕が少なく、また敷地の形状からも、1,2階の全ての個室を南向きにとるとすると、L、D、K、テラスは北側にとらざるを得なくなります。
L、D、K、テラスが北向きとなることは、配置計画上の重要な欠陥ともなるため、これを避けるための次善の策として、例えば1,2階の全ての個室を西側とし、L、D、K、テラスを東側とする案等が考えられます。以上の判断は建築計画上の重要なポイントで、相当に難しい判断であるといえます。
なお、個室の一部のみを南向きとし、一部を他の向きとする案は、絶対に不可ともいえませんが、配置計画上、簡潔明瞭さを欠く案となりがちであるため、一般的に好ましいものとはいえません。 - 更に課題条件の中で特に留意すべき事項としては、例えば、L、D、Kについては特記事項での「入居者又は入居者の友人等を招いて」等の記述から、入居者以外の外部の人が入る部屋として、また、この施設における基本設計条件として示されている「交流とプライバシーの確保」という基本条件から、L、D、Kの位置はできるだけ入口(玄関)に近い位置で、プライバシーに係わる建物の奥ではない位置に設けることが重要なポイントであるといえます。
また、L、D、Kに設けられる吹抜けは、単にL、D、Kのリビングまたはダイニングの部分に設けられるのみでなく、交流の場として関連性のある、2階に設けられる入居者同士の交流スペースと空間的に関連づけられるものとして設けられることが好ましいといえます。 - 以上のように、令和7年度の課題では、課題自体に目立ったサプライズといえるような課題条件は含まれていないため、その意味で、一見、難度はあまり高くなく、逆にやや難度は低いように見えるものの、課題条件の中に従来にも増して、いくつもの重要ポイントを含むしっかりした建築計画力を要する課題で、特に採点の基準を厳しくするまでもなく、受験者の基礎的な建築計画力の有無を評価するのに工夫された、従来にも増して建築計画に力点を置いた本来の設計製図試験の主旨に沿った課題であったといえます。
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本講座は、設計(建築計画)及び製図についての着実な基礎力の養成から着実な合格力の徹底養成を図るものですが、特に近年の試験の傾向から、合格のための重要な鍵となるどのような課題にも共通し、対応できるような基本的な建築計画の考え方、建築計画力の徹底養成を図る内容となっております。
通学、通信講座ともに全く同一のカリキュラム、内容で、建築計画力の徹底養成のために、全ての課題について添削指導することとしており、また、通学、通信講座ともに全ての課題について建築計画上の考え方に重点を置いたWeb動画による詳細なサポート解説(各約150分)を配信することとしております。
各段階の演習課題の内容は、本会会員の日本建築学会賞受賞者をはじめとする第一級のベテラン講師陣が予め発表された本試験課題の内容を徹底的に分析、検討して作成したものであるため、演習課題の内容が本試験の課題内容と似たものとなることもしばしばありますが、本講座はあくまでも予想問題やパターン化した事項の記憶のみによる勉強ではなく、着実な建築計画力の養成が合格へ導く最も重要で確実な道であるとの主旨から構成され、着実な実績を上げております。
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