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2019年度一級建築士設計製図試験の総評

「美術館の分館」

要求図書
●1階平面図、配置図(縮尺1/200)
●2階平面図(縮尺各1/200)
●3階平面図(縮尺各1/200)
●断面図(縮尺1/200)
●面積表
●計画の要点等
(注1)既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。
(注2)屋上庭園のある建築物の計画
(注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)

2019年度の一級建築士設計製図試験は、中部・関西以西の地域では予定通りの10月13日に実施されたものの、その他の地域では台風の影響により12月8日に再試験が行われるという異例の事態となりましたが、出題者側としては、前と後で実施された試験では、課題のレベル、難易度はできるだけ同程度のものが求められる一方で、課題の内容はできるだけ異なるものが求められるなど相当の苦労があったのではないかとも想定されます。 以上から、12月8日の再試験課題の内容について、10月13日に実施された試験の内容とも比較しつつ見ていくことにより、より鮮明に課題の本質を捉えることができるものと考えられます。

12月8日実施試験(以下、後試験と記します。)の課題と10月13日実施試験(以下、前試験と記します。)の課題とで計画上、基本的に異なる点

敷地条件上の違い

敷地条件としては、前試験も後試験も南北に細長い敷地である点は同じですが、前試験の接道条件は、敷地の短辺方向の北側に道路が接しているのに対して、後試験の接道条件は、敷地の長辺方向の東側に道路が接する条件になっています。

(前試験の敷地は、南北方向48m、東西方向32mの長方形の敷地の北側に一面道路が接しており、後試験の敷地は、南北方向48m、東西方向32mの長方向の敷地の東側に一面道路が接しています。)

この2つの条件を比べてみますと、10月13日実施試験の総評でも記しましたように、細長い敷地の短辺方向に一面道路が接する前試験の場合は、一般的に利用者ゾーンと管理ゾーンへのアクセス、ゾーニング等を分離する計画が難しくなり、この点、細長い敷地の長辺方向に一面道路が接し、利用者ゾーンと管理ゾーンの区分が比較的容易な後試験の場合よりも難度は高くなっていると考えられます。

建築計画上の条件の違い

建築計画の諸室の条件について、後試験でも前試験と同様に従来の試験の課題以上に、諸室について一歩踏み込んだ種々の条件が特記されていますが、後試験の課題では、特に屋上庭園を2階に設ける条件になっており、この条件が建築計画上、屋上庭園を最上階の3階に設けることが可能な前試験の課題に比して、後試験の建築計画を一段と難しいものにしています。

すなわち、この条件のために多目的ホールを一階に設けた場合、屋上庭園を2階分の階高を有する多目的ホールの上に設けることもできなくなり、また2階に設けた屋上庭園の関係で2階に設けることとなるアトリエ部門の諸室の計画にも工夫を要することとなります。

更に、3階に設けることとなる展示部門の諸室の計画も2階に屋上庭園があるが故に難しいものとなります。

以上から、後試験と前試験とでは、課題条件としての敷地条件と建築計画の条件の一部が基本的に異なり、計画上、敷地条件については前試験の条件の方が難しく、建築計画の一部の条件については、後試験の方が難しいこととなります。

前試験と後試験とで共通的な事項について

上記のような前試験と後試験とでの基本的な課題条件における違いがあるものの、両方の試験での共通的な事項も少なくありません。

問題用紙が昨年と同様のA2用紙による出題であること、課題条件が各室の特記事項から最後の計画の要点まで、長文となっている点など、当然のことながら課題条件の形式は前試験も後試験も同一の形式となっています。

要求室の条件として、面積の他に天井高、無柱空間等の他に室と室との連なりを示す動線等、従来以上にきめ細かく様々な条件が付されているのも従来にみられなかった前試験と共通の後試験の特徴といえます。

前年、前々年の試験のように、予め試験課題の発表時に前もって要求事項として明記されていなかったにもかかわらず、実際の試験の課題において、パッシブデザインとすることが計画上の条件となっており、このため建築計画上、適切な位置に全階にわたる開閉可能なトップライトを有する吹抜けを設けなければならないことも前試験と後試験の共通事項となっています。

前記のように、設置階の指定は異なるものの、屋上庭園を設置することの条件は、前試験でも後試験でも同様であり、また、樹木を植栽するための客土500㎜の部分を設けることとなっている点も共通事項となっています。

要点記述において、一部の項目について従来は任意となっていたイメージ図による記述が必須とされた点も前試験と後試験の共通事項となっています。

上記のように、前試験と後試験では、諸々の従来の試験で見られなかったことが含まれる中で共通的な事項が種々含まれており、他方、計画上の条件では相互に基本的に異なる条件が含まれていたことから、前試験と後試験とでは、共通的な事項を種々含み、かつ、難易度もほぼ同程度のものでありながら、基本的に異なる内容の試験課題となっていたと考えることができます。

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