(本欄は、当会の建築士講座講師が適宜分担して執筆し、当会建築士講座監修者(元国土交通省室長)が総合監修します。)
(令和4年度 第18回)令和4年9月18日
定番となったバリアフリーのための建築各部の寸法等の問題
今回は前回に引き続き、高齢化社会にも係わる問題として、バリアフリー化に対応する建築各部の寸法等の問題について記すこととします。
【問題1】車椅子使用者、高齢者等の利用に配慮した公共図書館の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づく移動等円滑化経路を構成する傾斜路においては、高さ200mmの段差に対して、勾配を1/10とし、手すりを設けた。
- エレベーター内に設ける車椅子使用者対応の操作盤の行先階数ボタンの位置を、エレベーターかごの床面から1,000mmとした。
- 廊下の有効幅員を、車椅子のすれ違いを考慮して、1,800mmとした。
- 多目的トイレにおいて、内法寸法を2,000mm×2,000mmとし、オストメイト用の流しや車椅子使用者が利用できる洗面台を設置した。
この問題は、平成26年一級建築士計画の、主として公共建築におけるバリアフリーに係わる問題です。
設問1は、高さ160mmを超える段差に対する勾配は1/12以下としなければならないので、誤りです。
設問2は、車椅子使用者の座面は床面から40cm程度であり、エレベーター内の操作盤の行先階数ボタンの位置は1m程度とするのが適当であるため、正です。
設問3は、車椅子の通行のための廊下の有効幅員は、単独で900mm、人とのすれ違いの場合は1,350mm、車椅子のすれ違いの場合は1,800mm程度以上とする必要があるため、正です。このため公共的な建築物の主動線となる廊下の幅は、1800mm程度とするのが一般的です。
設問4の多目的トイレにおいては、内部における車椅子の転回のために1,500mm×1,500mmの空間を確保し、便器の他、多機能トイレとしてのオストメイト用の流しや車椅子使用者が利用できるよう下部を600mm空けた洗面台を設置する必要があるため、内法寸法は2,000mm×2,000mm程度以上となるため、正です。
【問題2】高齢者や身体障がい者等に配慮した建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 車椅子使用者が利用する電灯の壁付きスイッチの高さを、床面から900mmとした。
- 車椅子使用者が利用する屋内傾斜路には、高さ1,000mmごとに踊場を設けた。
- 車椅子使用者が利用する便所のブースの出入口の有効幅を、850mmとした。
- 高齢者に配慮して、またぎやすいように、浴槽の縁の高さを床面から400mm、浴槽の深さを550mmとした。
- 高齢者に配慮して、洗面台や食卓の照度を800lxとした。
この問題は、平成27年二級建築士試験計画の問題です。この問題は、主として、住宅などの日常的な生活空間におけるバリアフリーに関する設問からなっています。
設問1は、車椅子使用者が利用する電灯の壁付きスイッチの高さは900~1,100mm程度ですので正です。なお、健常者の場合は1,200mm程度が望ましい高さです。
設問2は、車椅子使用者が利用する傾斜路は、高さ750mmごとに踏面1,500mm以上の踊場を設けなければならないため、誤りです。
設問3は、車椅子使用者が利用する便所のブースの出入口の有効幅は、車椅子の出入りのため850mm程度以上必要なため、正です。
設問4は、高齢者に配慮して、またぎやすいように浴槽の縁の高さは低くし、床面から400mm程度以下とし、浴槽の深さは安全のため浅くして550mm程度以下とする必要があるため、正です。
設問5は、高齢者に適した照度は、食卓や洗面台は健常者の2倍程度必要とされ、健常者の場合は200~500lx程度であるのに対して、高齢者の場合は500~1,000lx程度であることが望ましいため、正です。
上記問題1、問題2におけるような設問は、近年、バリアフリーに対応するための建築各部の寸法に係わる設問として出題頻度は高いものですが、これら個々の建築各部の寸法については、常に表面的に記憶するのではなく、あくまでも明確なイメージの下にそれらの寸法の意味を理解し、記憶することが肝要です。
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