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合格への鍵 講座>本試験の総評>設計製図の課題発表(二級)

2018.6.6 講評

本年度二級建築士設計製図試験の課題は、「地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅〔鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)3階建て〕」と発表されました。

本年度の課題は、予想していたとおり、「鉄筋コンクリート造」の課題となりましたが、3階建てとしての出題は、平成21年の「商店街に建つ陶芸作家のための工房のある店舗併用住宅」、平成27年の「3階に住宅のある貸店舗(乳幼児用雑貨店)」に続く課題となります。

近年の二級建築士試験の課題は、概して、内容が難化する傾向にあり、特に建築計画力が合否の重要な要素となってきていますが、本年度の課題も相当に高度な建築計画力を必要とするものとなることが予測されます。

本年度課題について特に留意すべき点として、以下のような点が考えられます。

近年の二級建築士試験の課題は、特に建築計画力が重要な要素となってきていますが、本年の課題で更にその傾向が顕著になると考えれます。

この課題では、建物用途として、「住宅」と「地域住民が交流できるカフェ」という2つの用途(部門)からなる複合した施設と捉え、その動線をいかに整理して計画を作るかの力が試されることとなると考えられます。

また、この課題は、これまで何度も出題されてきた店舗併用住宅の一種とも考えられ、平成19年の課題である「住宅地に建つ喫茶店併用住宅(木造2階建て)」とも一見、よく似た課題のようにも思われますが、本年度の課題が、「RC造3階建てである点」「住宅部分が二世帯住宅である点」「単なるカフェではなく地域住民が交流できるカフェ」と特記している点は、異なる留意点として、特に注目されます。

また、本年度の課題では、「併用住宅」でなく「併設する」となっている点も要注意で、カフェの経営主体が住宅に住んでいる人か否かによって動線等が異なることにも留意する必要があります。

建築計画上、カフェの部分を1階とし、二世帯住宅の中の親世帯部分を2階とし、子世帯部分を3階とする構成がオーソドックスな案と考えられますが、敷地周辺の景観等の条件によっては、異なる場合もあり得ることにも留意しておく必要があります。

また、敷地外構計画としての、住宅、店舗(カフェ)へのアプローチの計画とともに、1階部分から2・3階を結ぶ縦動線の計画や1階のカフェ部分の計画、2・3階の二世帯住宅部分の計画等、複合施設として、建築計画上、様々な要素が含まれていることに留意する必要があります。

更に、本課題では、単なる「カフェ」ではなく、「地域住民が交流できるカフェ」と特に記されていることにも留意する必要があります。この点では、平成24年の課題の「多目的スペースのあるコミュニティ施設」もやや似ている要素のある課題であるといえますが、この課題では、敷地の周辺環境条件等も計画上の要素として含まれており、本課題でも地域住民が交流できる要素として「カフェ」としての外部空間の計画等、地域交流の場としての様々な要素が含まれてくる可能性のあることにも留意しておく必要があります。

なお、平成24年の試験制度の見直し以降、設計条件の一部を受験者自身が考え設定する、設計条件の自由度の高い課題が出題されるようになり、より高度な建築計画力が合格のために必要になってきたことにも留意する必要があります。

以上のようなポイントの他、法規上の問題や製図力などについても、限られた期間で合格に必要な実力を養成するために、特に厳選された演習課題による効果的で着実な準備が必要とされます。

鉄筋コンクリート構造についての理解度を高め、あくまでも一般的なスパン等、鉄筋コンクリート構造の特性に則した、簡潔明瞭な平面構成とすること。

課題条件、敷地条件等に対してどのように考えて解答の計画案に至ったかを簡潔に記述する能力を養成しておくことが極めて重要です。

鉄筋コンクリート構造についての確実な理解に基づく、確実で迅速な製図力の養成が不可欠です。特に本年度の試験において、要求図書のひとつとして、新たに加えられた「部分詳細図」についても、特に留意しておく必要があります。

以上のような本年度の課題への留意点に対応して、合格を確実にするための最も重要な鍵は、「着実なRC造への理解に基づく着実な建築計画力を養成すること」であり、そのためには、単に多くの課題をこなすことよりも、精選された演習課題によって的確な計画上の応用力を基礎から着実に身に付けていくことが特に必要です。

二級建築士講座

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