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平成28年度一級建築士学科試験の総評

近年の一級建築士学科試験では、従来の出題範囲を超えた新規の内容の設問を含む問題や、従来の出題範囲内からの出題であっても、より深い理解力を要する設問を含む問題が一定の割合で出題されるようになってきました。 本年の試験でも概ねそれらの傾向が踏襲されたものとなり、総じて例年よりも難易度はやや高くなりました。

学科 I (計画)

計画の出題分野は建築計画各論の他、建築史、都市計画から設計・工事監理者の職責やプロダクトマネジメント等、多岐に渡りますが、本年の試験では、近年の傾向でもある作品事例に関する問題が5題出題された他、環境・省エネに関するパッシブデザイン、エアフローウィンドウ等に関する問題や災害対策に関するレジリエンス、BCP等に関する問題など、今日的な社会状況との係わりの深い事項に関する新規の問題が種々出題されたのが注目されます。

また、積算に関する図によって計算する問題も新たな傾向の問題として注目され、全体的に難易度は例年よりもやや高かったと考えられます。

学科 II (環境・設備)

環境・設備の出題分野は、建築環境工学、建築設備からなりますが、建築環境工学では、日照率や熱伝導率に関する問題等、理論に対する着実な理解があれば解ける問題が多く出題されました。

また、建築設備では、空調設備の省エネとの関連や給排水設備の緊急給水遮断弁、給湯設備の転倒防止措置、災害対策としての受水槽容量増量など、省エネや災害対策に係わる新規な問題も見られましたが、総じて過去の出題範囲からの問題が多く、難易度は例年同様かやや低かったと考えられます。

学科 III (法規)

法規の出題分野は、建築基準法と建築関係法令からなりますが、この内、建築基準法は20問、建築関係法令5問で例年通りの出題比率でした。総じて、建築基準法では過去の出題範囲からの問題が多くを占めましたが、昨年改正された、木造3階建ての学校を耐火建築以外の建築物とすることができる改正点についての問題や、また、関係事項として、特定避難時間倒壊等防止建築物に係わる問題も出題されました。

また、建築関係法令の分野では、特に建築士法に係わる問題が、融合問題も含め、5題出題されたことは、近年、建築士法が重視されてきている傾向のある中で、特に注目されます。 総じて、難易度は例年並みかやや高かったと考えられます。

学科 IV (構造)

構造の出題分野は、力学、一般構造、材料からなりますが、概ね、過去の出題範囲からの問題が多く、一部に支持地盤や免震構造、制震構造に係わるやや新たな視点からの出題も見られたものの、大方は過去の出題範囲についてのしっかりした理解と確実な知識があれば解ける問題で、難易度は例年並みであったと考えられます。

学科 V (施工)

施工は出題関連分野が広く、また専門用語が多岐に渡るのが特徴ですが、本年の出題内容としては、環境保全についての排出水の水素イオン濃度に関する問題、耐震改修工事に関する問題、「建築設計・監理等業務委託契約約款」改正に関する問題等、新たな視点からの問題が種々、出題されました。

また、過去の出題範囲からの問題であっても、表面的な記憶でなく、確実な理解による正確な知識がなければ正解に至らない問題も多く、総じて難易度は例年よりやや高かったと考えられます。

本年の学科試験の問題は、近年の傾向を踏まえ、環境・省エネ・防災等の昨今の社会状況を反映した過去の出題範囲外からの新規の問題も種々、出題されたため、過去の出題範囲にとらわれない更に幅広い対策が必要とされます。 他方、高度な新規の設問を含む問題であっても、その問題の4肢の設問が全て新規の設問であるわけではなく、過去の設問肢が含まれている場合も多くあります。新規の設問が解けなくとも、過去の設問が解ければ正解に至ることも多いことなどから、過去の出題範囲からの標準的な設問についてもいかに確実に解けるかは、新規の新傾向の設問が解けることと同程度に重要なポイントとも考えることができます。

- 2016年7月25日 -

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