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平成25年度一級建築士学科試験の総評
平成25年度一級建築士学科試験の内容は、21年度の試験内容の見直し以来の一貫した傾向である、近年の社会状況、新技術に係わる内容の問題が新規の問題として各科とも何問か出題されていることが目立つものの、全体的にいわゆる難問の比率は多くなく、このため、合格のための基準点、総得点も昨年と同様に高くなることも予想されるものとなりました。
合格のための基準点として公表されている各科目の過半数以上(学科 I 計画11点、学科 II 環境・設備11点、学科 III 法規16点、学科 IV 構造16点、学科 V 施工13点)かつ総得点90点以上は、あくまでも基本的な目安であり、問題の難易による受験者の得点分布により調整される場合もあります。
近年の傾向として、各科目について、従来の範囲内からの問題であっても、表面的な理解でなく、より深い理解力を問うような問題の出題が目立ってきていますが、25年の問題でも、そのような設問に工夫した問題が見られました。
学科 I (計画)
この科目は、難しい理論の理解を必要とする問題は少ない割に、非常に幅広い分野の知識を必要とする問題が多いことが特徴です。25年度の問題で特に目立ったのは、都市計画に係わる問題で、この種の問題は我が国のこれからの地域の活性化など、今日の社会情勢を色濃く反映したものとして注目されるものと言えます。
また、設計に係わる職責や業務内容に係わる問題も昨年に引き続き出題され、計画の分野の問題として定着してきた感があり、また、少子化、高齢化に係わる施設の問題も定着した感があります。さらに、近年、出題されることの多くなっている近・現代建築作品に係わる設問を含む問題が従来よりも多く見られるのも本年の傾向の注目点といえます。
学科 II (環境・設備)
この科目の分野は、エネルギーや環境等の今日的な社会情勢に最も直接に関連するため、毎年、いわゆる新規の問題が何題か出題されておりますが、25年度も太陽光発電システムの構成要素やコージェネレーションの効率評価に係わる専門性が高い問題等が出題されているのが注目されます。また、建築設備の耐震に係わる問題が出題されたのも新しい傾向として注目されます。他方、環境工学では、熱力学の問題や採光計画に係わる問題等、比較的しっかりした基礎的な知識があれば解ける問題が半数程度出題されていたのは例年通りです。
学科 III (法規)
建築法規は概ね、単体規定、集団規定とも従来の出題範囲を出るものではなかったものの、防火規定でやや難度の高い設問を含む問題が出題されたのが注目されます。
また、建築関連法規として、近年、比重が高くなってきている建築士法も3問出題されていますが、特に平成18年に大幅に改正された部分等も含め今後も留意する必要があります。更に、建築関連法規からは近年のストック型社会の到来を反映した「長期優良住宅の促進に関する法律」や近年の環境問題を反映した「都市の低炭素化の促進に関する法律」が出題されたのは、特に注目されます。
学科 IV (構造)
この科目は、材料力学、構造力学、構造設計、建築材料の分野からなり、理論の理解の積み上げが必要であるため、多くの受験生が苦手と思う分野ですが、25年度の問題は全体的に比較的素直で多くは確実な基礎力を身に付けていれば、解くことが出来る問題であったと言えます。しかしながら、上記のように、この科目については、理論に対するしっかりした理解力の養成が不可欠であり、また、来年以降は難化傾向となることも否定できません。なお、近年、環境問題からも重要視されつつある木造建築で、軸組工法の既存建築物の耐震改修に係わる問題が出題されたのは新たな傾向として注目されます。
学科 V (施工)
この科目は、幅広い分野に係わる知識を要し、近年は詳細な専門的事項に係わる高い難度の問題が出題される年もありますが、本年の問題の内容は概ね素直で平易な問題が多かったと言えます。本年も改修工事に係わる問題や、契約に係わる問題が昨年に引き続き出題されていますが、今後の傾向として、ストック型社会を反映した改修に係わる問題や、施工管理、契約に係わる問題等には引き続き特に留意して行く必要があると考えられます。
21年度に試験の内容が見直されて以降、本年の試験の内容は総体的にやや素直な問題の比率が高かったと言えますが、他方、学科 II 環境・設備では新規な難問と言える問題も何題か出題されていたことは、今日の環境・省エネルギーの分野が特に重要視されてきていることからも注目されます。いずれにしても、学科試験は受験者全体の得点分布により相対的に合否が決まるため、単に問題が難しかったから合格が難しくなる、問題が易しかったから合格が易しくなるというものでは無論ありません。このため、25年度の試験の内容は、来年の試験に向けてのあくまでの目安であることを理解し、あくまでも各科目についての徹底した基礎力の養成と、その上に築かれた応用力を身に付けることが合否の鍵であると言えます。
- 2013年7月29日 -

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