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平成24年度一級建築士設計製図試験の総評
24年度一級建築士設計製図本試験の課題「地域図書館【段床形式の小ホールのある施設である】」の内容そのものは、比較的素直な内容のものであったといえます。但し、元々の試験の課題対象の建物である段床形式の小ホールのある地域図書館そのものが、建築計画上、構造計画上、設備計画上相当に複雑な要素を含む、高度な計画力を要する施設であり、また、課題条件の自由度が比較的高いものであり、いくつかの重要な留意点を含むのものであったため、特に建築計画に際し高度な判断力を要するものであったといえます。本試験の課題について、特にポイントとなる留意点は概ね以下のような点であると考えられます。
[課題の概要]
施設の概要 ある小都市の市街地の公園の一角に建つ地域図書館で、小ホール、展示ギャラリー、会議室等を併設する施設とする
施設の規模・構造 階数 地下1階、地上2階建て
床面積 床面積の合計は、1,800岼幣紂2,200岼焚爾箸垢襦蔽浪1階を除く)
構造 構造種別は自由とする
[敷地の概要]
敷地条件は南側と東側に同一幅の道路が接し、北側と西側は公園に隣接しています。敷地の南側と東側には同一条件の道路が接しているため、南側と東側のいずれかの道路からメインアプローチを取り、他のいずれかの道路からサブの管理用アプローチを取ればよいが、敷地の形状が東西に長い矩形であるため、長辺側となる南側の道路からメインアプローチを取ったほうが、建物前面の駐車場や駐輪場の計画等がやりやすいといえます。

また、この課題では公園側からもアプローチを取ることが求められており、北側か西側のどちらからアプローチを取ってもよいが、メインアプローチを南側から取った場合、公園からのアプローチを北側から取ると、建物内で南北の動線が縦断してしまうこととなってしまうため、公園からのアプローチは西側からとした方が計画はしやすくなると考えられます。
課題条件では、小ホールは、1階でも2階でもどちらに計画してもよいこととなっていますが、小ホールの天井高が他の諸室よりも高くなることを考慮すると、小ホールを2階に設ければ、小ホールの部分の天井高が高くなり、階高が高くなることは、特に計画上の問題となる点は少なく、この場合は、小ホールは2階に設ける方が計画しやすいといえます。
課題条件として、比較的面積の大きな吹抜けを設けることとなっていますが、吹抜けは意味もなく設けるのではなく、空間的に有効なものとなることが必要です。また、この課題では、大きな面積の吹抜けを設けた場合の建築面積と建ぺい率との関係も重要な留意事項となっています。この課題では、吹抜けが有効に機能すると考えられるのは、(1)1階のメインホールと2階の小ホールのロビーの上下の空間を結び付ける吹抜けか、(2)1階開架スペースの一部を吹抜けとして2階の小ホールのロビーの上下の空間を結び付ける吹抜けを設ける(2階に小ホールを設ければ、必然的に開架スペースは1階に設けられることとなり、開架スペースの上部を吹きぬけとすることは空間的にも効果がある)ことなどが考えられますが、課題条件の建ぺい率70%という限度を考慮すると(2)のように吹抜けを設ける方が有効となります。
課題条件の設備計画に関する記述として(1)吹抜け部分の上部と下部の温度差に留意した空調計画(2)小ホールの空調計画に係わる記述が求められていますが、いずれも空調計画に関するしっかりした基礎的な知識があれば特に問題なく解答することができます。
24年度本試験課題におけるポイントとなる上記のような留意点は、本会講座の練習課題においても、いずれも取り上げられている事項であり、道路や公園からのアプローチの考え方、小ホールを1,2階のいずれに設けるかなど、課題条件における設計の自由度が高いだけに適切な判断力が必要とされますが、しっかりした基礎力の上に築かれた着実な応用力があれば確実に解答可能なものといえます。また、本課題では前述のように建ぺい率の限度が重要なチェックポイントとなっていることも見落せない留意事項であるといえます。いずれにしても、24年度の本試験課題も例年と同じく、着実な建築計画力を身に付けているか否かが、合否を分ける重要な鍵であったといえます。

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